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太陽の王子ホルスは未完成では

東映動画の名作「太陽の王子ホルスの大冒険」についてである。高校、大学時代、アニメージュなどでこの作品がよく紹介されており、アニメファンの教養みたいなものだった。ただ、ヤマト以降のアニメブーム世代にとっては少々古すぎて、作品名と、スタッフの名前だけ知っているというような状態だった(横浜生まれの知人などは「昔は正月のTVなんかでしょっちゅう放送されてたじゃん」というのだが、田舎生まれの僕はそういうのを見た記憶が無い)。で、80年代のことだと思うが、ビデオソフトとしてリリースされたので、アニメファンの端くれだった僕としては「これがかの有名なホルス、宮崎駿や大塚康生、高畑勲といった天才たちが死力を尽くした傑作かあ」などと緊張しながら見てみたのである。

ホルスのアクションや、美しい風景などに感心しながら見ていたのだが、狼の群れが村を襲うスペクタクルシーンで、突然静止画の引きになってしまった。それだけではない。村人が柵を作るために村長の蔵を取り壊すシーンでは、蔵の材木がばらけて、村長の頭を直撃、村長が目を回すという一連のカットが、秒間1コマ程度のガタガタのアニメーションでぎこちなく描かれているのである。絵コンテの1コマイコールスクリーンの1コマという感じの、ひどい画面であった。しかも、村長がふらふらする絵一枚ごとに調子を変えた声が当ててあるのである。右によろめいた一枚絵に「うーん」左によろめいた一枚絵に「きゅー」みたいな感じで(見ながら書いていないので、右とか「きゅー」とかは正確な表現ではない)。おかげで、なおさらガタガタな動きが強調されてしまっている。

あまりに目立つアラなので、気になって気になってしょうがなかった。だが当時、ホルスのこの部分に関して言及していた人を見かけなかった。また雑誌記事などでもこれを取り上げて事情を書いたりしているものを見たことが無かった。だから、これは誰も気にしないのだろうか。このシーンは表現上のなんらかのテクニックとしてあえて作られた物で、これを欠点とみなすのは僕の方が「わかってない」のだろうか、と悩んだものである。

最近、大塚康生著、作画汗まみれ(増補改訂版)を購入したのだが、これにはっきりと
「会社の命令で“止め”(動かない絵)にせざるを得なかった群狼の襲撃シーンや、全体を短くするために高畑さんが命を縮めるような思いで1秒、2秒と削っていった後半の苦しみは、今でも深い悔いを残しています」
と書かれていた。

この本はもともと1982年にアニメージュ文庫として出版されたものの改訂版なので、僕がホルスをはじめて見て、上のシーンに悩んでいたときには、おそらく既に世に出ていたのである。ああ、当時読んでいれば悩まなくてよかったのに。

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